接客やサービス業で増えているのが、「カスタマーハラスメント(カスハラ)」です。
理不尽なクレームや暴言が、現場スタッフを苦しめています。
特に、聴覚障がい者スタッフはカスハラの標的になりやすい傾向があります。
具体的な内容としては、お客様の言いたいことがわからなくて聞き返したり、筆談に時間がかかったりするだけで「態度が悪い」「遅い」と責められるケースが少なくありません。
聴覚障がい者の私は聴覚障がい者協会で手話普及をはじめに障害者差別解消などで活動しており、カスハラを受けたなどをよく耳にしております。
こうした問題は、スタッフ本人だけでは解決が難しく、経営者や上司の理解と支援が不可欠です。
この記事では、経営者・管理職が知っておくべき「聴覚障がい者スタッフを守るためのカスハラ対策」を解説します。
目次
カスハラとは?
カスハラとは、顧客からの不当な要求や暴言、威圧的な態度などの嫌がらせ行為を指します。
厚生労働省も2022年にカスハラ対策のガイドラインを発表し、企業に対策を求めています。
厚生労働省が作成したマニュアルはこちらで確認できます(職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産等、育児・介護休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント|厚生労働省)
特に接客業・小売業・医療・福祉の現場では深刻な問題です。
カスハラは単なるトラブルではなく、スタッフの人権侵害であり、企業の法的リスクにもつながるため、組織として防止策を講じることが重要です。
聴覚障がい者スタッフが直面しやすいカスハラの特徴
コミュニケーション上の誤解
- 筆談や手話でやり取りしていると「遅い」と怒られる
- 確認のための聞き返しを「態度が悪い」と誤解される
- 話しかけても聞こえなくて「無視された」と誤解される
聴覚障がい者の私の体験談:私は接客業したことはないのですが、とあるコンビニで会計したときのお話です。私が財布からお金を出しているとき、店員に何か話しかけてきましたが、聞こえない私は気づかないままお金を出して、顔を見ると不機嫌そうでした。おそらく無視されたと誤解したのでしょう。
とある図書館の受付の横の立て看板に「聴覚障がい者スタッフが働いています」と書いていました。いい方法だなと思っていますので、接客業で「聴覚障がい者スタッフが働いています」と書いた紙を入り口のあたりに貼っておくと無視されたと誤解されるリスクがなくなるかもしれません。
配慮不足を逆手に取られる
- 口頭説明を聞き取れなかったことを責められる
- 伝達ミスが本人のせいにされる
障害への偏見や差別発言
- 「障害があるから仕方ないだろう」と人格を否定される
- 些細なミスを理由に過剰な要求をされる
こうした状況に聴覚障がい者スタッフが日々さらされていると、メンタルの不調や離職につながり、企業にとっても損失となります。
経営者・上司が取るべき対応
事前の教育・啓発
- 全スタッフを対象に障害理解研修を実施する
- カスハラの定義と対応ルールを明確にする
- お客様への説明を文字や掲示物でも示すようにする
現場のサポート体制を整える
- 筆談ボードやタブレットなどのツールを活用
- トラブルが発生したとき、すぐに上司へエスカレーションできる体制を作る
- 現場任せにせず、管理職が相談・介入しやすい環境を用意
証拠と相談フローの整備
- トラブルが起きた際は、日時・内容を記録させる
- 上司・人事・法務などへの相談ルートを明示しておく
- 証拠を残すことで、企業としても適切な判断と対処が可能になる
法律と制度を押さえる
- 障害者差別解消法:合理的配慮を怠った対応は違法となる可能性がある
- パワハラ防止法:職場のハラスメント対策を義務化
- 厚労省のカスハラ対策ガイドライン:企業はスタッフを守るための措置を講じる必要がある
法律を理解しておくことで、企業はリスクを減らし、スタッフも安心して働けます。
聴覚障がい者の私の考え
聴覚障がい者スタッフに対するカスハラ対策に対して私の考えを書かせていただきます。
聴覚障がい者のスタッフがいる経営者・上司だけではなく、いなくても対策してほしい内容です。
カスハラ対策
いきなり厳しい言い方になるかもしれませんが、聴覚障がい者スタッフがいるのに、聞こえるスタッフばかりカスハラ対策するのは、障害者差別です。
合理的配慮の提供は2024年4月より義務化されています。合理的配慮とは、障害者に対しての配慮です。厚生労働省の合理的配慮のリーフレットもありますので、もし興味があれば読んでいただけると嬉しいです!
合理的配慮のリーフレットはこちら(リーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されました」 – 内閣府)
聴覚障がい者スタッフのいる方は、面談する時間を設けて、意見を聞いて、一緒に対策していくのが必要なのではないかというのが、聴覚障がい者の私の意見です。
まとめ
- カスハラはスタッフの問題ではなく、企業の経営課題です。
- 聴覚障がい者スタッフは特に標的になりやすいため、経営者や上司の理解と行動が重要です。
- 教育・体制・法的知識を整えることで、スタッフを守り、職場環境の改善と企業価値の向上につながります。
企業としての取り組みは、スタッフの安心感を高めるだけでなく、顧客との信頼関係を築く土台にもなります。