- 職場で聴覚障がい者の人が入ってきたけど、どう接したらいいのかわからない
- 聴覚障がい者にサポートしてあげたいけど、何を始めたらいいかわからない
という人は、この記事で聴覚障がい者の特性を学んでいただくと、どう接したらいいかがわかるようになります。ただ、聴覚障がい者の特性といっても聞こえのレベルが様々なので、全員そうではありません。参考程度でお願いします。
この記事では、聴覚障がい者の特性をはじめに、困っていること、その対策方法を紹介します。
この記事に主に聴覚障がい者の私自身の体験をもとに書いているので、どうサポートすればいいかが考える材料にもなると思います!
それでも、サポートで行き詰まったらお問合せよりご相談ください。
目次
聴覚障がい者の特性
まず、聴覚障がい者の主な特性を簡潔にまとめてみました。
- 聞こえの程度は人によってさまざま、口話レベルもさまざま
- 聴覚障がい者の多くの第一言語が手話
- 聴者とのコミュニケーション方法が主に筆談
特性を簡潔にまとめると以上の3つです。
多くの聴者が持つ「聴覚障がい者」のイメージは「耳が聞こえない」とされています。
そのとおりです。ただ、一言を加えますと、「全く聞こえない」「少しだけ聞こえる」「片耳しか聞こえない」といった様々な障害の程度をお持ちの方もたくさんいます。
聴覚障がい者の私は「全く聞こえません」
そこで、初めて会う聴者と会話するとき、よく以下のような会話をします。
聴覚障がい者の私の場合、補聴器ではなく、人工内耳を付けています。つけると、聞こえます。会話するときは、面に向かって、相手の口をしっかり見て、ゆっくり大きく話してくれたら、半分程度は理解できます。
放送など、面に向かって会話する以外の場面では、音としては聞こえますが、内容までは全くわかりません。
先ほどお話したように、聴覚障がい者の聞こえ程度は様々で、聴覚障がい者の私のように、ゆっくり大きく話してくれたらある程度は理解できるのに対し、私の聴覚障がい者の友人は早口で話しても理解できます。
このように様々な聞こえ程度の方々がいます。もちろん対応方法も変わってきますので、どういった対応したらいいのかを確認し、対応していくことが大事になってきます。
- 聞こえの程度は人によって様々で対応方法も多少変わる。
- 聴覚障がい者の多くの第一言語が手話
- 面に向かってゆっくり大きく話してくれたら理解できるろう者も多くいる。
とはいえ、実はもうひとつ知ってほしいことがあります。マスクをつけてのコミュニケーションです。
コミュニケーションとマスク
まず、以下の画像を見てほしいです。
聴覚障がい者を悩ませているコロナ禍 | みんなの障がい | 全国の障害者・福祉福祉施設が見つかるポータルサイト (minnanosyougai.com)より引用
画像を見て、何か感じませんでしたか?
緑服を着た男性が聴覚障がい者で赤い服を着た女性が聴者で、ろう者に対して、何か伝えたいそうです。
しかし、男性は全くわからない状態です。先ほど供述したように、「会話するときは、面に向かって、相手の口をしっかり見て、ゆっくり大きく話してくれたら、半分程度は理解できます」とあります。マスクで口が見えないということは、全く理解できません。
そこで、いろんな事業の方々が開発してくれたのが、透明マスクです。
透明マスクをつけるとつけたままでも、聴覚障がい者とコミュニケーションを取ることも可能です。
ただ、息などで透明の面が曇って見えづらくなる場合があるのがデメリットですが、聴覚障がい者の私は会話できました。
今はコロナが2類から5類になったことでマスクを外している人も増えてきていますが、中にはマスクをつけていきたい人もいます。
聴覚障がい者の私の知り合いに、普段は白いマスクですが、手話サークルに来ているときはわざわざ透明マスクに変えてつけています。そんな方もいるので、ぜひご参考していただけると嬉しいです!
手話とマスク
ここまで読んでみて、気づいた人がいるかもしれません。「手話は手で話すコミュニケーションだから、マスクをつけても手の動きを見たら通じるのでは?」
実際、手話の勉強を始めたばかりの人にこんな質問を受けたことがあります。
確かにそうです。手話は手で話すコミュケーションなのは間違いありません。ただ、聴覚障がい者の私たちは手の動きだけではなく、表情や口も見ます。
実は手話は1つの手話表現にいろんな言葉が含まれている場合が多いです。まず、以下の画像を見ていただくとわかるように手の位置(動き)は同じです。しかし、よく見ると、表情が違います。
手話通訳 マスク「口形の言葉」見えず/聴覚障害者が不安 (jcp.or.jp)より引用
画像に出ている女性の方がもし、マスクをつけていたら、表情や口が見えないので、「認める」なのか、「弱い」なのかの判断難しくなります。
確かに、文の流れによっては今の手話表現は「認める」と言いたいのだとわかる場合もありますが、透明マスク、あるいはマスクなしのほうがスムーズにコミュケーションがとれます。
聴覚障がい者に対してのよくある認識
これは、実際に手話を始める人、手話を始めようとしている人から聴覚障がい者の私によく聞かれたことを厳選してまとめています。
聴覚障がい者は口話できない?
「耳が聞こえない=口話できない」といったイメージを持つ人もいます。実際は、聞えなくても口話できる人もたくさんいます。聴覚障がい者の私の職場にろう者がおり、普通に口話できます。ただ、面に向かってではないと会話できないそうです。
聴覚障がい者の私は、自分の口から発言するのは難しいのですが、人の口をしっかり見て、ゆっくり大きく話すようにお願いしたら、半分は理解できます。
ただ、仕事や病院など大事なところは、筆談をお願いしています。万が一、ズレがあったら、トラブルが起きたり、病気が悪化してしまったりなどといった問題が生じる可能性があります。だから、そのことがないように正確な情報を得るために筆談をお願いしています。
手話は聞こえない同士でやるもの
確かにそのとおりです。聞こえない同士のコミュニケーション手段は手話でやっています。手話があるからこそ、聞こえない同士でも会話を楽しめます。
その考えは間違いはありません。ただ、聞こえる人との会話でも手話を使います。
少し歴史のお話をさせてください。全国各地の聴覚障がい者協会の熱狂的な活動のおかげで、差別が少しずつ解消しつつあります。その活動に参加した人が全員聴覚障がい者と思ったら残念ながら大間違いです。健聴者も参加しています。
なぜなら、手話通訳が必要だからです。差別解消が少しずつ解消しつつあるのは、聴覚障がい者をはじめに、健聴者(手話通訳)の活動のおかげです。
歴史のお話からもあるように、「手話は聞こえない同士でやるもの」だけではなく、聞こえる人との会話するときも使います。
手話サークルもそうです。教室もそうです。
聴覚障害者が困ること
仕事で困ること
主に聴覚障害者の私が仕事で感じた、困ったことを供述しています。ご参考していただけたら幸いです。
- 朝礼・夕礼などの内容がわからない。
- 忙しいからなのか、早口で指示されるが、内容把握しづらい。
- 放送の音に反応はできるが、内容は把握できない。
- スクリーンなどを使って説明される場合もあるが、簡単な内容にしか書かれてない。
- チャイムの音は聞こえるが、雑音の中では聞こえづらい。
- 上司に報連相する際、紙に書いて渡すが、書くのが面倒だからなのか無回答が多い。あるいは何の連絡もせず、進められたこともある。
- みんなは知ってて、自分は知らなかったことが多い。(聴覚障害者の仲間を含む自分には連絡なかった)
気づいた方も多いと思いますが、困っている部分のほとんどがコミュニケーションです。
チームで仕事するときはコミュケーションが重要です。しかし、コミュケーションができずに困ってしまうことはよくあります。
その中で一番困るのが「みんなは知ってて、自分は知らなかったことが多い。(自分には連絡なかった)」の部分です。
みんなは知ってて、自分は知らなかったという経験をお話します。色々ありますが、1つの事例を紹介します。
食堂の利用方法の変更
2020年コロナ流行時、食堂の利用方法が変わったという説明があった。そのお話があったのは、月に1回課全体で集まって課長による昼礼のときだった。課にいる聴覚障がい者は私を含めて4人。昼礼の基本的な内容は今月生産の状況、先月の品質の状況の報告だったが、その時は食堂の利用方法変更の説明があったらしいが、私たち4人は聞こえないためにわからなかった。
食堂を利用する聴覚障がい者は私を含め、2人。いつも通りに食堂を利用すると、食堂にいるスタッフの方に注意されました。「いつも通りに利用しただけなのに、なんで注意されるの?」と思いましたが、筆談をお願いすると、「コロナの影響で利用方法が変わった」と説明され、その方法に従いました。
職場仲間に確認すると、課全体の夕礼で食堂の利用変更の説明があったと知りました。課長による説明の時は、今月の生産状況、先月の品質の状況はスクリーンもあるので、「今月は忙しいな」「先月は品質不良が多かった」など理解できますが、食堂利用方法が変わったというのはスクリーンに映ってなかった。
仕事でのコミュニケーションの対策
私たち聴覚障がい者が仕事するとき、一番困っているのが
コミュケーション
だと理解していただけたと思います。
現在もやっているコミュケーション対策を紹介します。
もし、他にいい方法があれば、教えてください。
- 健聴者に手話を教える
- 音声翻訳アプリを使用
- 掲示板に足を運ぶ
ここに本文を入力
一つひとつお話していきます。
健聴者に手話を教える
簡単な手話でもいいので、少しずつ教えてきました。すると、手話を覚えたいと言ってくれて、今は勉強してくれています。感謝しています。
音声翻訳アプリを使用
音声翻訳アプリはUDトークです。
先ほどお話したように、食堂利用方法の変更のお話、聴覚障がい者の私たちに伝わってこなかった。その経験もあり、音声翻訳アプリをダウンロードし、連絡漏れがないように、班での朝礼や課全体昼礼のときは使っています。
また聞こえる人との会話するとき、役に立ちます。
UDトーク
Shamrock Records, Inc.無料posted withアプリーチ
掲示板に足を運ぶ
各職場に掲示板があります。貼ってくれる内容は「各職場の目標」「課長の方針」「生産の状況」「所長の方針」などです。
足を運んで、情報を掴んで、その方針に対して自分は何をしたらいいかを考えて行動しています。
日常生活で困ること
仕事でコミュニケーションで困ることがほとんどだと理解していただけたと思います。先ほど仕事で困ることはコミュニケーションでした。日常生活で困ることは音です。
- インターホンが聞こえない。
- 電話しかお問合せできないところがあると困る。
先ほどの仕事で困ることの多くはコミュニケーションでしたが、日常生活は音で困ることが多いです。
ただ、最近では、支援機器やアプリなどの登場によって、解決しつつあります。
日常生活での対策
インターホンが聞こえない
時間指定してない宅急便や急な来客が来ても気づかない場合が多いです。聴覚障がい者の私が一人暮らしを始めて8年ですが、特に急な来客来ても気づかない場合が多いです。
今では、モニター付インターホンがついてる物件、配線不要のインターホン取付しており、急な来客来ても気づきやすくしました。
このワイヤレスチャイムは音だけではなく、光るので、耳が聞こえない方でも気づけます。また、読者のあなたが聴覚障がい者のお子様を持つ方であれば、提案をさせてください。
2階建てで、2階で聴覚障がい者のお子様が勉強しているとき、「ご飯ができたよ」とわざわざ2階まで階段を上って声かける方が多いのではないでしょうか。聴覚障がい者の私も学生のころはそうでした。
毎日2階まで上がって呼びに行くのしんどいという方は、このワイヤレスチャイムを提案します。
机の上にワイヤレスチャイムを置くと光っていることに気づけます。
少し見にくくて申し訳ないですが、聴覚障がい者の私はパソコンの下にワイヤレスチャイムを設置しています。
家ではパソコンに向かって作業することが多いので、パソコンしていくうちに光ると急な来客でも気づけるわけです。
さらに配線不要なので、どこでも設置できます。だから、聴覚障がい者のお子様の机の上に設置し、お母さまが冷蔵庫などに呼び出しベルを設置するとキッチンにいながら、呼び出しが可能になります。
電話でしかお問合せしか出ないところあると困る
これは電話リレーサービスができるまでは、電話でしかできないところへのお問合せは、非常に困っていました。その時は親に頼んで電話をお願いしました。今では、電話リレーサービスのおかげで、電話できるようになりました。
電話リレーサービスとは以下の画像の通り、電話している人と電話を受ける人との間に手話オペレーターが立ち、通訳してくれるので、話ができます。
総務省|電話リレーサービス (soumu.go.jp)より引用
電話でしか受け付けてないところへ電話かけるとき、このサービスがあるので、非常に助かります。
聴覚障がい者のことを理解するために
最後まで読んでいただきありがとうございます。聴覚障がい者が特に困ることはコミュニケーションです。
今では、手話普及はもちろん、それに支援機器やアプリなどなどの登場でコミュニケーションができるようになりつつあります。
ただ、まだまだコミュニケーションの壁はたくさんあります。先ほどの「仕事で困ること」でお話があったように、今でもまだまだあります。
理解してもらうために聴覚障がい者自分自身の努力もそうですが、健聴者の読者のあなたのご協力も必要です。
差別が少しずつ解消しつつあるのは、聴覚障がい者の方々だけではなく、健聴者の方々のご協力のおかげです。
聴覚障がい者の私も、活動のひとつとして、この記事を作成しています。健聴者の読者のあなたも理解していただいて、手話を始めるきっかけなどになっていただけたら非常にうれしいです!
ただ、コミュケーションするとき、1つの言葉に対する聴覚障がい者と健聴者の認識が違う場合が多いです。
例えば、私たちがよく使う「~つもり」があります。これは健聴者にとっては「やる」方向で言っているのではないでしょうか。聴覚障がい者の場合は「やらないかもしれない」という意味で言っています。
聴覚障がい者の私も注意されるまでは「~つもり」はやらないかもしれない意味で言ってしまいました。
それを勉強できる書籍がこの「ろう者のトリセツ 聴者のトリセツ」です。
この本を読むと、言葉の認識のずれが学べるので、健聴者の読者のあなたが聴覚障害者に指導している先輩や上司であれば、ぜひ購入して、言葉のずれを理解していくと対応が変わるはずです。
まとめ
聴覚障がい者の困ることの多くはコミュニケーションです。まず、聴覚障がい者の特性を知ることから始めていきましょう。
復習として聴覚障がい者の特性は以下の通りです。
- 聞こえの程度は人によってさまざま、口話レベルもさまざま
- 聴覚障がい者の多くの第一言語が手話
- 聴者とのコミュニケーション方法が主に筆談
特性を簡潔にまとめると以上の3つです。
また、支援機器やアプリなどの登場でコミュニケーションの円滑化になりつつあります。しかし、まだまだ壁があります。
とはいえ、どんな対応をしてもコミュニケーションできないといった悩みをお持ちの方はお問合せよりご相談ください。